ある室長が、一人の生徒について話をしてくれました。「やればできる」という某個別指導塾の理念について考えるとき、いつも浮かんでくる生徒がいます。九月の初め、高校3年生の男子生徒がボクシンググローブをかかえて、教室に現れました。背が高く肩幅も広く、第一印象はいかにも体育会系のクラブ活動をしているな、という感じでした。レベルチェックを行うと、アルファベットも満足に書くことができないことがわかりました。彼が帰ったあと、残り少ない時間でどうやって学力をレベルアップするか講師と話し合いました。正直なところ、私には(大丈夫かな)という不安感のほうが強かったのです。実は、彼は入塾のとき、一つの約束をしてくれました。それは「毎日必ず塾に来る」というものでした。それを聞いたとき、私はあまり信用しませんでした。なぜなら、そう言っておきながら実際に実行する生徒は少なかったからです。しかし、彼は毎日毎日、塾にやって来ました。担当講師は、彼の性格や受験までの残りの時間を考え、演習や宿題は相当な量を出していました。自習にもつき合って質問に答えたり、オリジナルプリントを作成したりして、できるだけの支援をしました。エントランスで出迎えるとき、いつもボクシンググローブを右手にかかえ、真剣なまなざしでブースに向かっていきました。その目は、ほかの生徒とは違っていました。目にとても勢いがあるように感じたのです。
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